焚香(ncense)

火を入れるという行為には、古くから祈りの気配がつきまといます。
それは何かを燃やし尽くすためではなく、
香りという目に見えないものを、この空間に呼び寄せるための儀式です。

焚香とは、香を焚くこと。
それはすなわち、香りに火を通し、煙というかたちで立ちのぼらせること

私たちが扱う「バフール」は、
中東から南アジアにかけて親しまれてきた、香木や樹脂、スパイスなどを練り合わせた伝統的な練香です。
炉や香炉に炭を置き、その上でゆっくりと熱を伝えることで、
重たく甘やかな香りが、空間の奥へと静かに広がっていきます。

空間の浄化、儀式の前の精神統一、
あるいはただ、心と空気を整えるために――
焚香は、そのすべてをそっと内包しています。

香りは“香る”のではなく、“焚く”という行為の中で、
空間と感覚に溶け込んでいく。

焚香とは、その過程そのものを味わうための、美しい儀式なのです。

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